シンチャオ! サイゴンノオトのわん吉です。
ソンべ焼きというベトナムの民芸皿をご存知ですか?淡い黄色や生成りといった自然な色合いの地色に、藍色のラインや花の絵柄がおおらかに描かれた素朴な食器です。手に持ってみると軽くてポツポツした凹凸もありますが、なんとなく放っておけない愛おしさたっぷりなんです。
もともとはベトナム南部を中心に、家庭や食堂や屋台で使われていた庶民のお皿。多少欠けちゃってもへっちゃらで使われていました。今はベトナムの食卓でも、扱いやすくて丈夫なメラミンやプラスチックの食器が主流となり、残念ながらソンべ焼きはあまり見かけなくなってしまいました。
東京・学芸大学に、希少なビンテージもののソンべ焼きを揃えているセレクトショップ「333(バーバーバー)」があります。
お店で毎日ソンべ焼きに触れているオーナーの坂野さんと店長の川口さんに、ビンテージソンべ焼きへの思いをお伺いしました。
−−−−−−−−−
一枚一枚が違う表情。フランス統治時代のセンスの影響を感じるベトナムの民芸皿・ソンべ焼き
――最初に、ソンベ焼きとの出会いを教えてください。
坂野さん:333はベトナム雑貨を中心にアジアアイテムを取り揃えている店で、現地に買い付けに行き、いいものを選んで持ち帰ってくるというスタイルで展開しています。
いろいろなアンティークショップや蚤の市を回っている際、棚の下の奥の方に何かあるのを見つけてそろそろと取り出してみたら美しいお皿で、「おっ!これは!!」と。それが「ビンテージソンべ焼き」との出会いでした。
中国の福建省からベトナム南部の旧ソンべ省に伝わった民芸の陶器で、近年のものはライティウ焼きとも言われるそうです。フランス統治時代にベトナムにもたらされた絵付けの技術を合わせた、特に1950〜70年代のビンテージのものを333は取り揃えています。
ベトナムの人の温かさを感じるお皿。絵柄も美しく毎日見ていても飽きないです。
――ビンテージソンベ焼きのどのようなところに惹かれますか?
坂野さん: 50〜70年代のものは絵付けのクオリティーが素晴らしいです。さっと手で描かれているのですが、同じ絵柄でも一枚一枚が全然違います。職人さん一人ひとりの手癖もあって美しく個性のある絵付けです。釉薬の使い方もそれぞれ違ったりするのがおもしろいですね。
川口さん:当時の絵付けはベトナム人の温かさを感じます。誰かに向けたわけでもなく自由に描いた柄がかわいくて、毎日見ていますが全く飽きないです。
坂野さん:もともと家庭で使っていた民芸皿で、裏返すと数字やマークが描いてあるものもあるんです。例えば結婚式などで近所の人が大勢集まるような場合、たくさんのお皿が必要になるので、参加するみんなでお皿を持ち寄っていたそうです。お皿の裏の数字やマークは、自分たちが持ってきたお皿がどれかわかるようにするために描かれていたと聞きました。ソンベ焼きは、こういった人と人をつないでいくような存在でもありました。そんな風にベトナムの人たちの文化を支えてきたという意味でも、ソンべ焼きっていいなぁと思うんです。
ベトナム人が使わなくなったものに僕たちは価値を見出している。ビンテージソンべ焼きは「アップサイクル」です。
――ビンテージソンべ焼きはどのように見つけて買い付けているのですか?
坂野さん:通常の骨董品屋ではあまり取り扱いがないんです。というのも店のオーナーがだいたい50〜60歳で、たぶん彼らは小さい頃からソンべ焼きの食器を日常使いして、見慣れてしまっていたこともあるのかなと思います。一方で、ベトナムの魅力を再発見している若い世代からは、熱い視線が注がれているのを感じます。
坂野さん:ソンべ焼きの窯元はどんどん少なくなっていますが、ビンテージソンべ焼きを探しているうちに知り合いも増えてきました。「こういうの探しているんだけど」と尋ねると、トラックで4〜5時間移動し、田舎で「どっかの家にソンべ焼きないかな?」と訪ね回って集めてきてくれます。熱心なコレクターから譲ってもらうこともあります。
ベトナムの田舎の人たちは「もう使わないから」とビンテージソンべ焼きを提供してくれます。でも僕たちはそうしたものに価値を見出し、リユースしながら価値を高めてソンベ焼きの美しさを伝えていく。まさに「アップサイクル」が生まれていると感じています。
ビンテージソンべ焼きを集めたホーチミンの姉妹店「Sông Bé(ソンべ)」
――ホーチミンにある姉妹店「Sông Bé(ソンべ)」についてご紹介ください。
坂野さん:店長のハオさんは僕にとってビンテージソンべ焼きの先生でもあります。ハオさんはたくさんの人にソンべ焼きを伝えたくて、お店もやってみたい。僕たちはソンベ焼きの魅力を皆さんに伝えるにあたり、ベトナムでお店を出せたらと思っていました。そんな夢と気持ちが合致して、2019年10月ホーチミンに姉妹店「Sông Bé」がオープンしました。ビンテージソンべ焼きを中心に、ベトナムならではのライフスタイル雑貨を揃えています。
−−−−−−−−−
坂野さん:グラフィックデザインや店舗の空間デザインは333の方で行い、ベトナム語しか通じない買い付けや職人さんとのやりとりはハオさんが担当するなど、一緒に組んで楽しく仕事をしています。
姉妹店ができて333にもしっかりとした数量のビンテージソンべを取り揃えられるようになりました。
ソンべ焼きが好きな人が集まってくる、品揃え随一の雑貨ショップ
――東京・学芸大学のショップ「333」をご紹介ください。
川口さん:ベトナムの美しい手仕事が見える生活雑貨や、
−−−−−−−−−
川口さん:アジア雑貨を求めてお越しくださる方や、既にソンベ焼きをご存知でお探しの方、ソンべ焼きが好きな人が自然と集まるお店と言えるかもしれません。最近は、お越しいただいたお客様に居心地がいいと感じていただけるような場づくりが特に大切だと感じているところです。
ビンテージソンべ焼きは探して集めるのがとても大変ですが、見つける過程でもお店に並べた際にも、人と人をつないでいるのかなと思うと、より素敵なものを見つけたいという熱い気持ちが湧いてくるのです。
坂野さん:コロナ禍でなかなか現地に行けない状況ですが、現地のハオさんや職人さんたちもまた大変な状況です。そんな中でも新たなアイテムのサンプルを送ってきてくれたり、「他に欲しいものがあれば探して送るよ」と言ってくれて、彼らの熱量や助けようとしてくれる気持ちがとても伝わってきます。今まで積み重ねてきた「つながり」を改めて再認識しました。
みんなで協力し合って日本へ届けられたビンテージソンべ焼き、ぜひお店に見に来てください。
+++++「333」ショップ情報+++++
333(バーバーバー)
〒152-0004 東京都 目黒区 鷹番 3-18-3
平日12:00~20:00 土日祝11:00〜20:00 水曜定休(コロナ禍にて時短営業中)
+++++「Sông Bé」ショップ情報+++++
ホーチミンの姉妹店「Sông Bé」
+++++最後にわん吉より+++++
庶民のお皿、ソンべ焼き。何枚も重ねて一気に窯で焼くために、できあがると上下の器がくっついてポチッと点のように盛り上がる部分があります。そんな凸凹も全然気にしないおおらかさがソンべ焼きの魅力かなと思っています。
最近はビンテージソンべ焼きが人気と聞いて、品揃え抜群でセンスもいいと評判の333さんにお話を伺いながら、ソンべ焼きの魅力に迫りました。
下の写真は、以前ホーチミンの骨董通りと言われるレコンキゥ通りで見つけたオーバル皿。レトロかわいい花柄に惹かれて買ったものですが、見るたびにほんわかと温かい気持ちにさせてもらっています。
みなさんもそんなソンべ焼きにぜひ触れてみてくださいね。