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VOL.182 旅のかけら-6 旅先で、フエに出会う

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

ザライ省にあるChợ phú túc(フー・トゥ市場)を散策したのは、2014年の夏でした。ドライバー兼通訳のフエの友人と歩いていて、「この方は、フエの人だよ」と教えてもらい、私も市場で働くお母さんの顔立ちをみてすぐにフエの人だとわかりました。売っているのもフエの台所を思わせるもので、乾燥の粗く刻んだ赤とうがらし、にんにくのように使う小さな白い粒のネムという根菜、ターメリック粉とお茶にする生葉がありました。

ベトナム戦争のとき激戦地であったフエの人々は、戦中・戦後にかけて、命からがら住むところ食べるもの、仕事を求めて避難をして中部高原のザライ省にも住むようになりました。フエからザライ省までは、現在ならラオス沿いの山岳地域を通り中部高原地方までおよそ450kmの道のりです。ベトナム戦争では、故郷にとどまる人、ボートピープルとして船に乗り込む人、避難をして移住する人たちがいました。

元々、ザライ省を含む中部高原には、多様な山岳民族が暮らしています。今まで、ベトナムの政策などで、とりわけ南北統一後にはベトナム北部から多くのキン族(ベト族)の入植があったと聞きます。

前回までにフー・トゥ市場の様子を紹介しました。少数民族の村からめずらしい野菜をみることができました。→ VOL.181 旅のかけら-5 市場にて、少数民族の村から

 

©yukiko aoki

突然、現れた私の友人であるフエ人にうれしそうな微笑みをみせてくれたお母さん。お名前を伺うのを忘れてしまいましたが、もし、フー・トゥ市場にいくことがあれば、赤とうがらし売り場を訪ねてみたいと思います。もう少し話をすると、私の友人のお母さんは、戦中・戦後に人助けをして有名な人だったそうです。食べるものがない時代だったので、村の小さな集まりにでかけて食べものがあまっていたら、貧しい家に運びにいってあげていたそうです。フー・トゥ市場で出会ったお母さんに名前を伝えると知っているとおっしゃっていました。

 
©yukiko aoki

フー・トゥ市場にフエでよくみかける赤とうがらしをみつけて写真に収めました。人の暮らしとともに野菜の種が運ばれることがあると思います。
 
ザライ省には、フエから移住してきた木工家具をつくる人もいて、同じ中部高原にあるダックラック省にはフエ出身の方々がコショウ栽培をしていました。フエに限った話ではないと思いますが、ベトナムの小さな旅のかけらをつなぎあわせると、歴史的な背景に人々の暮らしが今日あることにも思いを寄せていきたいと思います。

 
 
フォトグラファー 青木由希子