single.php

VOL.200 風薫る五月。日本で出会うベトナム

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

近年、日本に暮らすベトナム出身の若者に出会う機会が増えてきました。ベトナム政府によると日本に住むベトナム人の方々は、50万人近くにのぼるそうです。

毎年ゴールデンウィークになると三重県伊賀市の里山に帰省しますが、駅のホームにいるとベトナム語がきこえてきたり、町工場に通勤するのをみかけたり、ベトナム食材店も増えてきて、私がHảo Hảo(ベトナムの国民的即席麺)やBánh hỏi khô(ビーフンをシート状に編み込んだ乾麺)などをみていたら、何が欲しいですか?と話しかけてくれたり、道を歩いていて目が合うと「こんにちは〜」とあいさつをしてもらったりします。

町なかで自然にあいさつをかわすのは、何年ぶりでしょう…。春の陽気とともに日本とベトナムの空気がやさしく入りまじった心地がしました。

 
 

©yukiko aoki

風薫る五月。長田遊水地(木曽川)にて。橋からながめる春から夏へとむかう新緑のグラデーションがきれいです。山々にかこまれた盆地に伊賀の里山はあります。

 

©yukiko aoki

遊水地周辺の散歩道にて。山から風が吹いてきて草木がそよぎます。昔からの故郷の風景です。

 

©yukiko aoki

菜の花畑。菜種油の材料にします。

 

©yukiko aoki

今年も田植えがはじまりました。カエルの鳴き声がひびきわたります。白鷺などの水鳥が舞い降りて、田んぼのいきものを探しにきます。近くの森から鳥のさえずりがきこえてきます。ベトナムも日本もお米の国なので、故郷に想いをよせる風景がきっとあるのではと思います。

 

©yukiko aoki

ベトナム食材店で購入したスイーツです。
Chè Bưởi (チェー・ブォイ)ザボンのチェーと、Sữa Chua Nếp Cẩm(スア・チュア・ネップ・カム)黒もち米とヨーグルトのチェーです。どちらも日本にはない素材の組み合わせで、これからの季節におすすめのスイーツです。

Chè Bưởi (チェー・ブォイ)は、ザボン(文旦)の果肉と、皮の白いわたの部分に水溶きタピオカ粉を含ませてゆでて、もちもちぷるぷるにしたものに皮なし緑豆を混ぜて冷やしたものです。ココナッツクリームをのせていただきます。Bưởiの上品な柑橘の香りに癒されます。

Sữa Chua Nếp Cẩm(スア・チュア・ネップ・カム)は、黒もち米をゆでて甘みをつけて、コンデンスミルク味のヨーグルトをのせたものです。アントシアニンがたっぷりで甘酸っぱいのでブルーベリーヨーグルトのような味がします。自家製のヨーグルトがとてもおいしかったです。そういえば、伊賀のワイルドライスには黒米や赤米がありました。

                         ***

話はもどりますが、町なかのコンビニにいくと店員さんの名札に、マインさん、チュオンさんとききなれた名前をみつけました。留学生がアルバイトをしています。ご高齢のおばあさんが、レジで支払うときに、チュオンさんはおばあさんの耳元にそっと寄り添うようにして、聴き取りやすく話してあげていました。さりげない思いやりに温かい気持ちになりました。

東京に桜が咲いていた頃、善福寺(杉並区)まで花見にいきました。川沿いの桜並木が満開で、橋の上からさまざまな国の言葉で記念写真を撮りあっていました。ベトナム人の友だちに教えてもらったのですが、日本にきたら、富士山と桜と雪をみてみたいのだそうです。日本にあこがれを抱いて、留学生として、また、仕事を学ぶために実習生として来日していますが、迎え入れる日本側には、高齢化社会にともなう人材不足などの課題があります。

コロナ禍に仕事やアルバイトを失うなど、在日外国人の方々も日々の暮らしに苦労しました。母国への帰国も困難でした。今、日常の暮らしにもどりつつあるなかで、コンビニで働いていた青年のように思いやりを大切にしたいと思います。里山のつながりあう穏やかな景色のように。

 
 
フォトグラファー 青木由希子