先々月のベトナムの旅から、チャム民族の村より。
長年、親しくさせてもらっているチャム民族のお母さんの家に、気になる木があります。訪れる度に大きく成長して、木漏れ日のうつくしさや、木の葉が風によってすれあう音に耳を傾けながらの昼下がり。
Cây dâu tằm 庭の桑の木の下で。
中庭に水場があり、野菜や茶碗を洗ったり、簡単な洗濯物をしたり、庭の植物に水をあげるのですが、暑い日がつづいていたので、水しごとをすると清々しい気持ちになります。
ちょうど、桑の実がなっていて、熟した実をみつけて、手をのばしていただきました。完熟した濃い紫の実は、すぐになくなってしまい、甘酸っぱい実を食べました。
桑の木の下は、ドラゴンフルーツやLá lốt(ロットの葉)が育っています。
日かげを好むLá lốtの英名は、Wild Pepperです。主に、スパイスを効かせた焼肉料理につかいます。生で食べるとパリッとした歯応えです。
Cây me タマリンドの木の下で。
庭の真ん中に、タマリンドの大木があります。
Lá me non(タマリンドの若い葉)を選び、チャム民族の料理ではスープの仕上げにつかいます。カインチュアスープ(甘酸っぱいスープ)なら、ここでは、タマリンドの実はあまりつかわずに若葉をちらします。レモンのようなさわやかな味です。
滞在中に、タマリンドの花が咲きはじめました。枝から花をつけていて、ちょっとユニークなかたちで、うすいピンクとイエローがきれいでした。
先ほど、タマリンドの若葉を食べると書きましたが、これくらいに葉が折りたたまれた若い葉を選ぶと、歯触りはやわらかくてレモンのようにさわやかな酸味で、ほのかにあまい香りもします。
同じタマリンドの大木に、結実して豆さやになっているのもありました。タマリンドは、雌雄同株で自家受粉をするそうです。ゆっくり見上げると、若葉だったり、花が咲いていたり、豆さやになっていたりさまざまです。
以前、ミツバチが巣をつくっていたとき、お母さんがハチミツを村の子どもたちにわけていました。子どもたちは甘いハチミツに盛り上がっていました。タマリンドの木は、さまざまに恵みをもたらしてくれます。
お母さんの家の庭では、鶏のヒナを育てていました。庭の木のおかげで地面からの照り返しもなく過ごしやすそうです。木がもたらすやさしさは、きっと、数えきれないほどだと思いました。
Palei Katuh パレイ カトゥー / Làng Chăm Tuấn Tú (トゥアン・トゥ村)*
チャム民族のチャム・バニの村、ニントゥアン省にて。
*チャム語の村の名前 / ベトナム語の村の名前です。
撮影協力:Nyさん
フォトグラファー 青木由希子