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VOL.188 チャム民族のつみ草をたずねて-2

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

『Con đường nhỏ vào vườn』 〜庭への小さな道〜
 

©yukiko aoki

この小道をつみ草をしながら歩くと、平飼いの地鶏がいて豚小屋とヤギ小屋があります。その先の木かげのテーブルを囲みながらごはんを食べたり、ハンモックに揺られて昼寝をしたり、村を訪れたときはゆっくり過ごします。太陽の強い日差しは木の葉のフィルターでやさしい光となり、さらりと乾いた風が吹いています。 
                     
 

©yukiko aoki

チャム民族のつみ草を教えていただいているのは、Palei Baoh Dana/ボホダナー村に暮らすTrượng Ốm(トゥオン・オゥン)お父さんです。庭の草やつる性の植物や木の葉をつんで、チャム民族の料理をつくってくれます。家のまわりには、さまざまな草や木が自生していて、また、お父さんの手で優しく手入れがされています。

オゥンお父さんは、この村で生まれ育ち、同じ村のお母さんと出逢いました。チャム民族は母系社会のため婿入りをします。義理のお父さんから土地をわけてもらい農業をしていました。ぶどう・緑豆・ヤギを育てる仕事をしていました。現在は、夫婦でカフェを経営しています。

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前回() のように、チャム民族のつみ草をわかる範囲でご紹介します。この村のあるニントゥアン省は乾燥した地域でめずらしい生態系が守られているところです。

 

©yukiko aoki

チャム語:Haraik heng(ハレッ・ハン)
ベトナム語:Lá mau duc(ラー・マウドック)

若葉を生のまま食べます。胃と腸によいそうです。

 

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チャム語:Hala dang(ハラー・ダン)
ベトナム語:Lá giang(ラー・ザン)

レモングラスをつかう鳥のスープやチャム民族の米粉スープにもつかいます。

 

©yukiko aoki

Hala paya(ハラー・パヤー)
La kho qua(ラー・コークア)

小さな実のなる品種のにがうりで、青い実は、お酒に酔ったときに茹でて食べます。
にがうりの葉を食べるとよく眠れるそうです。

 

©yukiko aoki

地鶏(Gà địa phương)とつみ草の山。ヤギの餌にする草をお父さんが集めてきました。つみ草の山には、草むらを住みかにしていた虫やミミズがいて、鶏がみつけて食べています。鶏は草も食べますが穀物や虫を食べます。

 

©yukiko aoki

チャム語:Njem nyat(ヤン・ニャット)
ベトナム語:Rau nhớt(ラウ・ニョット)

スープ、チャム民族の米粉スープにもつかいます。
腸の病気によいそうです。

追記:モロヘイヤRau đayと同じ(仲間)だそうです。スープにするとぬめりがでてきます。葉や茎にトゲのようなヒゲのようなものがありユニークです。

 

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チャム語:Taduk luak(タトゥ・ラック)
ベトナム語:Lá lốt(ラー・ロット)

香りのよいコショウ科のラー・ロット。ベトナムのほぼ全土で食べられています。
チャム民族の村では、生の葉をそのまま食べたり、焼肉とあわせたりします。

関節炎・リューマチにいいそうです。

ベトナム料理では、Bò lá lốt(ボー・ラー・ロット)は、広く知られています。薬味に漬け込んだ牛肉をロットの葉で巻いて焼きます。

 

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豚小屋にて。子豚たちが競い合うように母豚のおっぱいを飲んでいました。豚の斑点模様は交雑種によるものです。山の民族の村に行くと固有種の黒豚などがいます。豚の餌にするのは、Cám gạo(米ぬか)・Cơm(ごはん)・Cây Chuối(バナナの木のスライス)・Rau(野菜)です。

 

©yukiko aoki

耳の長い白ヤギと、黒と白の毛色のヤギがいました。小屋のワイヤーが少しだけ広げられていて子ヤギが顔をだしていました。好奇心いっぱいの瞳に出逢いました。

チャム民族には、ヤギの種類はたくさんあるそうです。ヤギはいろんな草や葉を食べて、時々、海塩の結晶もなめています。ヤギは、チャム民族の神聖なおまつりにもかかせない存在です。

 

©yukiko aoki

豚小屋の脇に溜池のようなところがありました。つみ草を案内してくれる友人のソーさんが餌のかけらを落とすと、小魚たちがいっせいに水しぶきを立てて口を開けて水面から出てきました。私はびっくりしてシャッターチャンスを逃してしまいました。

 
 
取材協力:Sohaniim(ソーさん)

『Con đường nhỏ vào vườn 〜庭への小さな道〜』 このタイトルは、ソーさんが考案してくれました。庭への小さな道は、焚き木をつかう台所からつみ草や家畜の世話をするための暮らしの動線です。

 
 
フォトグラファー 青木由希子