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VOL.187 チャム民族のつみ草をたずねて-1 

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

ベトナム中部から南部にかけて、「チャンパ王国」*1 という国がありました。その王国のチャム民族は海洋民族として知られ、アラブからアジア諸国との交易や日本とは朱印船貿易などを通じて文化交流がありました。

ニントゥアン省とビントゥアン省のあたりは、チャンパ王国の最後の領土パンドゥランガがあったところで、現在もチャム民族が多く住んでいます。

ニントゥアン省にあるチャム民族の村に通うようになり、Palei Baoh Dana/ボホダナー村 *2 に訪れたときに、チャム民族のつみ草の文化があることを知りました。数年前から写真を撮りはじめたばかりですが、伝統的な暮らしの一部をお伝えできたらと思います。自然の摂理とともに古来より育まれた知恵は、今も親から子へと口承伝承されています。

私にとって、チャム民族のつみ草の学びは、サスティナブルで村のなかですべてが揃うほどの暮らしの豊かさを感じるものでした。教えてくださったTrượng Ốm(オゥン)お父さんとSohaniim(ソーさん)に感謝します。

                        *

『Kraong Cuah(クワオ川)のほとりにて』 

ボホダナー村に流れるKraong Cuah(クワオ川)*3 のほとりに咲く、さまざまな野の花や木。

 

©yukiko aoki

写真の説明をすると、一番奥は田んぼです。
順にひとつ手前から、実の油を灯りにつかう茶紫の葉が特徴のある木。
根っこの汁が、おたふく風邪に効くというかすみ草のような淡い白い花を咲かせる木。
目のかゆみにお茶にするといい黄色い草花…。

 

©yukiko aoki

これらの身体をいやしてくれる草や木は、日常の身近な風景のなかにあります。川の土手や田んぼの畦道や空き地にみつけることができます。

下記に、現地で教わった話をもとに、チャム名がわかるところは書いて、ベトナム名とつかい方を書きました。今回は身体をいやしてくれる草や木をご紹介します。ベトナムにいけるようになったら、内容を深めていきたいと思います。

 

©yukiko aoki

チャム名:不明
ベトナム名:Cây mắc co ( Hoa Trinh Nữ )
日本名は、オジギソウです。

天日干しにてお茶にすると、
よく眠れて腰痛や関節炎にいいそうです。

さまざまな草のなかに、かわいらしいピンク色の花が咲いていました。
葉に触れるとオジギをするように小さな葉が閉じられていきます。
ベトナム名では恥ずかしがり屋という意味があります。

 

©yukiko aoki

オジギソウにてんとう虫がきていました。
草むらをのぞいていると、どんな虫が住みかにしているか生物の関わりにも興味がわいてきます。

 

©yukiko aoki

地べたをはうように黄色い花と白い花が咲いていて、川辺からのやさしい風に吹かれ、かすかに揺れていました。

 

©yukiko aoki

チャム名:Phun kacak
ベトナム名:Cây Gai Yết Hầu

花・葉・茎すべてを天日干しにしてお茶にします。
よく眠れて、目のかゆみや赤みによい、鼻血がでたときにもいいそうです。

 

©yukiko aoki

チャム名:不明
ベトナム名:Cây nở ngày đất

痛風によいそうです。
天日干しにして、お茶にします。

ペールグリーンに近い小さな白い花の先は、ほのかにレモンイエローでした。
花の形や葉のつき方もユニークでした。

 

©yukiko aoki

チャム名:不明
ベトナム名:Cây thầu dầu(3枚の茶紫の葉のタイプ)

実の油を灯りにつかっていました。
葉をお茶にすると、腰痛・膝痛によいそうです。

よくみると、緑色の実に赤い小さな花が咲いています。

空き地でよくみかける木なので、調べたところ、ニントゥアン省とビントゥアン省に広く自生しているようでした。

 

©yukiko aoki

チャム名:Phun tam ngun
ベトナム名:Cây Cà Độc Dược
日本語名:チョウセンアサガオ

喘息にいい。天日干しした花をタバコのように火をつけて吸う。

透き通るように美しいチョウセンアサガオ。日本にもありますが、
毒性があるようなので、決して試さないでください。

 

©yukiko aoki

チョウセンアサガオの実。この実に小さな種がつまってます。種はこぼれて広がり、次の世代に受け継がれていきます。

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文中の*1〜3について
Cham pa/チャンパ王国(2世紀〜19世紀):
192年に建国。現在のベトナム中南部(北限はクアンビン省北部〜南はビントゥアン省とドンナイ省の境界あたりまで)に広がる国土がありました。Đại Việt/大越国・現、ベトナムから侵入をうけ国土は北から南へと縮小していき1834年に王国は滅亡します。チャンパ王国の最後の領土パンドゥランガは、現在のニントゥアン省とビントゥアン省にあたり、チャム民族が多く住んでいます。

Palei Baoh Dana/ボホダナー村
チャンパ時代からの村の名前です。Palei(パレイ) はチャム語で村という意味です。ベトナム名はLàng Chăm Chất Thường(チャットゥン村)といいます。ベトナム南中部沿岸地方、美しい海と山に抱かれるニントゥアン省にあります。

Kraong Cuah(クワオ川)
ボホダナー村に流れる川の名前です。Kraong Cuahはチャム語で、Kraong は川という意味です。クワオ川/Sông Quao はベトナム名です。この川は、バウチュック陶器村()にも流れています。

 
 
フォトグラファー 青木由希子