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VOL.189 チャム民族のつみ草をたずねて-3

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

『aia bai tapung(ヤー・バイ・タプン)』〜さまざまな野草の米粉スープ〜 

ボホダナー村ではじめて食べたつみ草の米粉スープには、10種類もの野草が入っていました。つみ草を教えてくれるỐm(オゥン)お父さんが庭や家のまわりで草や木を刈ってきて、テーブルに広げて若葉やつる先などの食べやすい部分をえらび、お母さんがスープをつくってくれました。米粉と野草を煮たとろみで食べやすく、滋味にあふれるシンプルなレシピでした。つみ草をして葉をえらび調理するまで、丁寧に草と向きあっています。

 
*『aia bai tapung(ヤー・バイ・タプン)』とはチャム語で、さまざまな野草(野菜)と米を砕いたスープという意味になるそうです。チャム民族の村では、つみ草を野菜(Rau)というところがあり、昔から慣れ親しんできた食文化があると思います。

*Palei Baoh Dana/ボホダナー村は、チャンパ王国時代からの村の名前です。現ベトナムのニントゥアン省Chất Thường村になります。

 

©yukiko aoki

『aia bai tapung(ヤー・バイ・タプン)』のつくり方

材料は、白米と水、小さな川魚と水、塩、野草(草や木の若葉やつる)です。

「米粉をつくる」Bột gạo nghiền
・白米を洗い、浸水する(15分ほど)
・すり鉢に白米を入れ、たたいて砕く
・水を入れてふやかしておく

「さまざまな野草」Lá rau rừng thập cẩm
・ゴーヤの葉
・トケイソウの仲間の葉
・hala mbat/ Lá Chùm bátというつる性の草
・モリンガ
・ツルムラサキ
・モロヘイヤ
・hala dang/Lá giangというつる性の草
・アマメシバの葉
・かぼちゃの葉やつる
・タマリンドの若葉

*草や木の葉を合わせて風味豊かなスープがつくられます。ツルムラサキやモロヘイヤなどは刻んだりスープにするとぬめりがでてきます。

 

©yukiko aoki

米粉は、ひと握りほどの白米を浸水し、すり鉢にあてます。

 

©yukiko aoki

トントンとついて、つぶつぶ感が残るくらいに砕きます。

 

©yukiko aoki

お茶わんに移して水を入れます。

 

©yukiko aoki

鍋に水と小さな川魚を入れて煮ます。米粉を加えて溶かします。

 

©yukiko aoki

塩を入れて、葉を切りながら鍋に入れて煮ます。

 

©yukiko aoki

仕上げにタマリンドの若葉を入れます。

 

©yukiko aoki

チャム民族のいろいろな野草をつかった米粉スープが出来上がりました。右隣のハーブ皿にもつみ草が盛りつけされていて、若葉のやわらかい歯触りとピュアな香りを楽しみなからテーブルを囲みました。川魚のグリルはヌックマムのタレにつけて食べます。つみ草と一緒においしくいただきました。テーブルの一番奥のスープは、ゴーヤの葉だけの米粉スープです。日本にいてもつくれそうなレシピです。

 

©yukiko aoki

チャム民族のつみ草の米粉スープには、独特な食べ方があります。
スープとしてスプーンで食べることもあるのですが、実は、つみ草の米粉スープは白いごはんにかけます。そして、Muối ớtという生の赤唐辛子と塩をたたいたものをのせて箸で食べます。

どんな味がするのですか?とよく聞かれます。とろろごはんにお漬物をのせて食べるような感じ、ごはんの上にお粥をかけて食べるようなものです。滋味にあふれるおいしさから、とろろごはんがイメージに近いと思います。食べやすくて栄養があり、胃に優しくほどよいお米のとろみがまろやかな味に仕立てています。野草と川魚の出汁がじんわりと沁みてきます。

                      *

つみ草の米粉スープでいただいた10種類の野草から、めずらしいものをご紹介します。日本語名は私が調べました。

 

©yukiko aoki

チャム名:hala mbao
ベトナム名:Lá chùm bao
日本名は、トケイソウの仲間です。

葉・つぼみ・花・種。主に葉を食べます。
米粉スープなどのスープにつかいます。
よく眠れます。

 

©yukiko aoki

チャム名:rjem mbat
ベトナム名:Lá chùm bát/bình bát dây

葉は米粉スープにします。栄養があります。白い花が咲いて赤い実がなります。赤い実は甘酸っぱくておいしいそうです。

 

©yukiko aoki

Ốm(オゥン)お父さんです。
つるのある草などは長い棒で丁寧にたぐりよせて、からまりがあれば解いてあげて、草刈りカマで刈りとります。お父さんと過ごしていると、さまざまな草が自然の森のように思えてきます。先人からの知恵と優しさにも触れて、つみ草は日々の暮らしの基礎であり文化であることに気がつきます。

 

©yukiko aoki

チャム名:hala mangei laow
ベトナム名:Chùm ngây
日本名:ワサビノキ・モリンガ

若い葉を食べます。薬になる(ガンによい)。
鳥のスープ、米粉スープにします。
近年、スーパーフードとして広く知られています。種さやの煮込みもおいしいです。

 

©yukiko aoki

チャム名:rjem mleng
ベトナム名:Rau mồng tơi
日本名:ツルムラサキ

葉と種(緑色の実)をゆでたり、スープにしたりします。
マムネム(魚の発酵調味料)や肉とヌックチャム(ヌックマムベースの香味たれ)につけて食べます。栄養があります。
緑色の実は食べますが黒色は食べないと聞きました。

*黒い実は、ベトナム中部のフエでペンのインクとしてつかわれていました。ベトナム北部では布の染料にするところもあるそうです。

 

©yukiko aoki

チャム名:njem nyat
ベトナム名:Rau nhớt / Rau đay
日本名:モロヘイヤ

スープ、米粉スープにもつかいます。
腸の病気によいそうです。

 

©yukiko aoki

チャム名:不明
ベトナム名:Chùm ngot / Rau ngót
日本名では、アマメシバになるようです。

スープにします。栄養があります。

 

©yukiko aoki

チャム名:hala dang
ベトナム名:Lá giang

レモングラスとつかって鳥のスープ、米粉のスープにします。
酸味があります。ベトナムの固有種になるそうです(wiki調べ)。

透明感のあるやわらかい若葉や葉の組み合わせによると思いますが、草の苦味はまったく感じませんでした。お米の甘みが野草の無垢な味を引き立てて、すばらしいスープでした。

 
取材協力:Sohaniim(ソーさん)

 
 
フォトグラファー 青木由希子