single.php

VOL.190 チャム民族のつみ草をたずねて-4 

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

『庭のハチミツと、つみ草と鶏のスープ』 〜Mật ong vườn và cua bai(Canh gà rau rừng)〜
 

©yukiko aoki

ボホダナー村のỐm(オゥン)お父さんに、つみ草を教わりに訪ねたある日、隣の家の庭にあるタマリンドの木に蜂の巣があるからと案内をしていただきました。

 

©yukiko aoki

タマリンドの木の枝に円盤状の蜂の巣がつくられていて、ミツバチが巣をおおうように密集していました。間近に蜂の巣をみるのははじめてで迫力がありました。小さめの蜂で地元のミツバチだとききました。

 

©yukiko aoki

オゥンお父さんは、これから蜂の巣をとりますよといい、タバコに火をつけて煙を蜂の巣に吹きかけました。煙たさでミツバチが巣から逃げるのだそうです。

 

©yukiko aoki

蜂の巣は六角形の部屋が隙間なくつながったきれいな集合体になっていて、ハチミツはゴールドに輝いていました。その場で、巣みつを削って生のハチミツをいただきました。タマリンドの木のハチミツは、さっぱりした甘みで透明感がありました。タマリンドの木は、さまざまな草木のつながりのなかにあり庭のハチミツをありがたくいただきました。

蜂の巣は、働き蜂の分泌する蜜蝋(ミツロウ)でつくられています。その蜜蝋からロウソクをつくりチャム民族の礼拝・儀式にもつかわれています。

→ VOL.126 チャム民族のラマダン 手づくりのロウソク 
https://p-pho.com/column/vietnamgourmet/18736

 

©yukiko aoki

庭を歩きながら、オゥンお父さんが、この葉は皮膚の調子が気になるときに貼るといいんだよと、葉っぱを噛んでから頬につけてみせてくれました。

 

©yukiko aoki

この木は、根っこが薬になります。かすみ草よりも小さな白い花を咲かせていました。庭に咲く花は、かわいらしい表情をみせてくれます。

 

©yukiko aoki

チャム名:Puid cham saik
ベトナム名:不明

小さな白い花の根っこは、おたふく風邪に効きます。
根を石などですって、しぼった汁を患部にぬります。

 

©yukiko aoki

チャム名:Phun iem majak bingu tanyik
ベトナム名:Cây màn màn hoa vàng

黄いろの花びらが4枚あり、ユニークな形状をしています。
これも根っこが薬になり刻んで、炒めて(焙煎して)つかいます。
悪寒・頭痛があるときに、鍋に入れて水を沸かし、お茶のように飲みます。

 

©yukiko aoki

オゥンお父さんのところへいくと、料理をつくりはじめていました。トマトを炒めています。

 

©yukiko aoki

鶏の内臓やモミジ(鶏の足)を入れて煮ています。新鮮で色鮮やかです。

 

©yukiko aoki

丸鶏をレモングラスと煮たスープに、トマトと鶏の内臓の煮込みを加えます。濃厚なスープの香りが広がっていきました。

 

©yukiko aoki

この料理は、cua bai(ヤー バイ)「野菜と鶏のスープ」といいます。

鶏のスープには少し酸味のある *hala dang/Lá giangという若葉を入れます。
rjem mbat/Lá Chùm bátや、ツルムラサキ rjem mleng/Rau mồng tơiの葉も入れます。

*野草の名前は、チャム名/ベトナム名の順番で書きました。VOL.189の後半から写真付きで紹介しています。

 

©yukiko aoki

モリンガ(ワサビノキ)hala mangei laow/Chùm ngâyの若葉を仕上に入れます。トマト風味の鶏のスープは4種類のつみ草と煮込みました。
平飼いの鶏のすべてと野草や木から大地の恵みいっぱいのスープが出来上がりました。

 

©yukiko aoki

煮炊きをするときココナッツの殻や枯れた葉を燃料にしています。つみ草をした葉はスープにして煮たり、生の若葉を料理に添えて食べたりします。

今回は「庭のハチミツと、つみ草と鶏のスープ」をご紹介しました。チャム民族の伝統は村の暮らしをドラマティックに感じさせてくれます。

 
取材協力:Sohaniim(ソーさん)

 
 
フォトグラファー 青木由希子