ベトナム民族学博物館-1のつづきです。博物館の展示物を紹介します。
1つめは、キン族(ベト族)による水上人形劇 「Múa rối nước(ムア・ゾイ・ヌオック)」の木彫りの人形です。
水上人形劇は、ベトナム北部紅河デルタの農村から生まれた伝統芸能で、元々、村のため池ではじまりました。水面が舞台に見立てられ、人形や動物は伝統音楽にあわせて神話や民話、のどかな村の暮らしを演じます。(参考:タンロン水上人形劇)
木彫りの人形の胴体は、水面下で長い竿とつながっていて、舞台裏の操縦士により躍動感のあるコミカルな動きを表現することができます。たとえば、田植えや村人が魚をつかまえるシーンなどは、水の性質を活かした演出に感心するほど。盛り上がって水しぶきが観客に飛んでくることもあり、臨場感たっぷりに楽しめます。
竹製の魚とりで、魚を追いかける村人。
水面ではまさに水を得た魚のように表情豊かに演じられます。
左から水上人形劇案内人のテウさん。仙女の舞、龍の踊りより。
水上人形劇はいくつもの物語があり、劇団の職人によって人形がつくられています。
ベトナムのサイトによると、
水上人形劇の人形は、水辺に植えられたいちじくの木からつくられて、耐水性・耐久性を保つために漆(うるし)を塗り、漆黒・金・銀・朱色などの天然素材の絵の具を重ねています。
2つめは、ムオン族のカレンダー(ホアビン省)。
竹の棒に刻まれたムオン族の暦は、「Đoi (ドイ)」という星の移動によって一年間の月日が分けられています。竹の棒は12本あり30日をあらわす線が刻まれていて、結婚式の日取りなど縁起の良い日や悪い日を調べることができます。祈祷師は星を観察し自然災害を予測します。
ムオン族の村に通う友人の話によると、竹の棒の暦を腰からぶら下げて使っているのを見かけたそうです。持ち歩くにもちょうど良いカレンダーです。
こちらは、思わず手に取ってみたくなるような、美しさ。
タイ族のパームリーフのバスケットと織物の展示。
ザーライ族の背負子(しょいこ)。
ヘッドストラップが付いています。
編み模様を変えながら丁寧に編んでありました。素材のしなやかさと温もりが伝わってきます。
暮らしの道具は使いやすさと肌で感じる美しさがあるのだと思いました。ベトナムのそれぞれの民族に思いを寄せながら見ていきます。
一瞬ドキッとしたザオ族のシャーマンのマスク。
木を削った仮面に、木の皮やケモノの毛が付いています。