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VOL.191 チャム民族のつみ草をたずねて-5

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

『風の通り道とタマリンドの木』 〜 Con đường của gió và Cây me 〜 

ボホダナー村にて。とても暑かった日にタマリンドの大きな木の下に身を寄せると、すぐそばの川辺から、涼やかな風が吹き抜けていきました。身体にこもった熱がすっとひいて心地よい風に癒されました。

このとき、タマリンドの木(Cây me)に風の通り道を教わったような気がしました。この木は、チャム民族の村でよくみうけられる曲がりくねった道沿いの川のほとりにあります。村にはまっすぐな道や田んぼはあまりみられません。ゆるやかな自然のかたちで奥ゆきのある風景が広がっています。

 

©yukiko aoki

タマリンドの若葉 (Lá me non) は、風に揺れてきらめいていました。小さな木の葉が光に舞うたびに美しさが増していくようでした。

タマリンドの若葉は、チャム民族の料理で主にスープの仕上げにつかいますが、ミツバチが好んで木に巣をつくり花の蜜を集めていて、その周辺の草花には、蝶やてんとう虫がいて、花や葉や根っこはチャム民族の伝統的な知恵により身体を癒してくれる薬にしたり、料理につかわれたりしてきました。

 

©yukiko aoki

タマリンドの木の側に流れる川は、クワオ川(Sông Quao)です。

この川は、東南アジアで最古の陶器村といわれる「バウチュック陶器村」にも流れていて、先人の知恵から、川底の白い砂と田んぼを掘り返した下の方の土をこねて陶器づくりをしています()。

同じ川なのにボホダナー村を流れるクワオ川の水は土色で、草木がうっそうと茂っていました。季節によってまた村によって川の表情もさまざまです。次の機会には、川や田んぼの方にもいってみたいと思います。

 

©yukiko aoki

タマリンドの木には、毎日、決まった時間に水牛が歩いてきます。骨格のはっきりしたずんぐりした水牛は、木の下をくぐり、土手を下って、ザブ〜ンと水しぶきを上げて気持ちよさそうに水浴びをして曲がりくねった道を歩いていきます。

 

©yukiko aoki

畦道では、つみ草をするオゥンお父さんと近所のおじさんが立ち話をしていました。庭の野草を手にしながら情報交換をしているようでした。

次回は、その野草で『チャム民族のミチヤナギの米粉スープ』をご紹介します。

 
取材協力:Sohaniim(ソーさん)

 
 
フォトグラファー 青木由希子