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VOL.196  チャム民族の 井戸の村…2

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

タンティン村にはじめて訪れたとき。
古代からつづく井戸の水のせせらぎが、枯れることなく青々と広がる水田にそそがれていることに、不思議な気持ちになりました。

 

©yukiko aoki

村の水田にヤギがきていました。
私の方を見つめたり稲の葉をつついたり好奇心がいっぱいで、ゆるやかに細くうねる畦を軽やかに歩いていました。山の方からは風が吹いて、青田の清らかなあまい香りに包まれます。

 

©yukiko aoki

いつもの通り道に季節ごとの草花が咲きます。小さな虫たちの営み、いろいろな草や種、風にのって旅のはじまりを待つ綿毛、一粒の種籾から芽生え育てられた稲の花がちらちらと咲きはじめています。

 
500年つづく井戸の村は、海から近いところに淡水の水脈をみつけ、チャム民族のスタイルでスクエアの木枠の井戸をつくりました。

井戸をのぞいてみると、私の感想になりますが、底がみえそうなくらいで、それほど深くないところから水を引いているように思いました。スクエアの木枠の井戸は3辺の木の板に囲われ、1辺は低く、水仕事がしやすいように、また、水が小川に流れていくようにつくられています。数年前、村に水道が通ってからも井戸の水は現役で大切につかわれています。

 

©yukiko aoki

井戸のすぐ近くに住むおじいさんとおばあさんから、
『男の人がつかう井戸と女の人がつかう井戸があるのは、この村だけ』と、教わりました。

 

©yukiko aoki

Bingun likei (Đực井戸)
撮影:2018年(左)2017年(右) *同じ井戸の写真を2枚載せています。

男の人がつかう井戸で、洗濯はしないけれど、食事をつくるのはできます。
よみ方は、チャム語で、Bingun likei / ビグゥン・リケイ。Bingunは井戸、likeiは男性という意味です。ベトナム語は、ドゥック(男性)井戸といいます。井戸の基礎の辺りをみると、石が敷きつめられているのがみえます。どのような構造になっているのでしょう。そもそも豊かな水脈をどのようにみつけられたのでしょう…。

 

©yukiko aoki

Bingun kamei (Cái井戸)
撮影:2018年(左)2017年(右) *同じ井戸の写真を2枚載せています。

女の人がつかう井戸は、洗濯と食事をつくることができます。
よみ方は、チャム語で、Bingun kamei / ビグゥン・カメイ。Bingunは井戸、kameiは女性という意味です。ベトナム語は、カァイ(女性)井戸といいます。木の茂みの前にあり、いつも草木でおおわれています。木造の古い井戸ですが、側面の板は取り外しができるようです。水を汲むときや水田に流すときなどつかい分けがあるのでしょう…。女の人がつかう井戸も基礎の部分に、石が敷きつめられていました。

*実際に洗濯をしていたのをみたことがあります。次回は、民家を訪ねて井戸の水の暮らしや農業についてお話しをききたいと思います。

 

©yukiko aoki

2つの古代井戸の水は小川でひとつになり、村の水田を満たしていきます。井戸のなかの閑かな湧き水は、行き先を知るとさらさらと流れていきます。

 

©yukiko aoki

小川の流れに沿って人や自転車が通れるほどの小道がつづいています。小川の土手にはタロイモが植えられています。つみ草もできて、小さな魚をとることもできます。水のあるところに暮らしがはじまり、子どものころから庭のように遊んで、学び、伝承されていると思います。

タンティン村に、他の村から人々が立ち寄り一時を過ごしていくのをみかけます。井戸の水をすくい顔を濡らしたり、手を清めたり、子どもときて小さな魚を観察したり、グループで遊びにきていたり、思い思いに過ごします。

 

©yukiko aoki

ヤギたちがいた水田は収穫のときを迎えました。粒ぞろいの黄金色の輝きがやさしく揺れて、言葉にならないほどに美しかったです。

 
 
取材協力:BI Travel – Teambuilding/Tour Trải Nghiệm – Khám Phá WebSite

 
 
フォトグラファー 青木由希子