一年前の年の瀬に、ベトナム中部クアンナム省(ホイアンがあるところ)の山岳地域から、チュオンソン山脈*に沿って南下する旅をしました。ダナンナンバーのトラックは、旧正月を飾る金柑(キンカン)の木を運んでいました。
*チュオンソン山脈(アンナン山脈)
インドシナ半島東部をベトナムとラオスにかけて連なる山脈で、全長は1,100km。
ダナンの隣りクアンナム省ホイアンは、中部地方で最大の金柑の栽培地だそうです。電柱には、少数民族の太鼓を叩く看板がありました。チュオンソン山脈周辺には山岳少数民族が多く暮らしています。
旅のはじまりにカフェに入りました。旧正月の飾り付けをしていました。カフェに来る人々はそれぞれの民族の言葉で話していました。
Cà phê muối(カフェ ムォイ)塩コーヒーをオーダーしました。ベトナムで流行っている飲みものです。
写真を撮る前にかき混ぜてしまいましたが、グラスの底にコンデンスミルクと深煎りコーヒーが注がれてホイップをたっぷりのせた三層になっていました。肌寒い日に飲む塩コーヒーは、クリーミーで甘くてほのかな塩味と苦さが余韻となって、和みます。
ホイアンを流れるトゥーボン川の上流へと車を走らせました。ひと休みしたときに木の枝先にユニークな鳥の巣のようなものをみつけました。山の空気はきれいに澄んでいます。
中州に水牛がいました。どこから来たのでしょう。ちょっと、驚きました。
ホーチミンルート*は、整備されて走りやすくなりました。
*ホーチミンルートは、ベトナム戦争中に兵士や武器・食料を運ぶ補給路でした。ベトナムとラオスの国境を跨ぐように山が連なるチュオンソン山脈に沿っていることから、チュオンソンルートともいわれています。
車を停める度に今までにみたことのない不思議な植物に魅かれます。木のてっぺんに大きな黒い鞘をみつけました。豆科でしょうか。チュオンソン山脈は生物多様性がゆたかで、クアンナム省周辺は稀少な生きものの生息地となっています。
棚田の美しい里山でひと休み。霧雨が降っていました。薪が木の皮の紐で束ねて置いてありました。
棚田の段の側面に土を掘った穴がいくつもありました。なにかの生き物の住処ではと思いましたが、実際にはどうでしょう。
丸太で水量を調節していました。山からの養分が程よくゆきわたるような気がします。
畔にCây sung(スンの木)がありました。無花果(イチジク)の一種です。未熟の実は渋みがあり生のまま赤唐辛子塩をつけて食べたり、塩漬けにしたりするそうです。熟した赤い実は甘いのでそのまま食べます。友人にきいたところ、スンの実は、子どもの頃によく食べた思い出と共にあるそうです。
ちなみに水上人形劇(Múa rối nước)は、軽くて水に浮くスンの木がつかわれます(☆)。
田植えを終えたばかりの棚田の風景がつづきます。道ゆく長距離バスや大きな荷物を抱えたバイクが走っていきます。