織物の村にて、ご縁をいただき Nghệ nhân Van Thi Than / 職人 ヴァン・ティ・タンさんのアトリエを訪問しました。
Nghệ nhânとは、職人、優れた技術・技能を持つアーティストにのみつかわれる呼び名です。

2024年2月 タンさんのアトリエにて。チャム族の衣装に縫いつけるベルト(細長い帯状のもの)を織っています。
タンさんは、兄弟姉妹がたくさんいて、姉妹たちはお母さんから織り物を教わりました。難しい織模様を織りあげるまで熱心にとりくみました。職人となり、伝統の織紋様とタンさんにしか織ることのできない織模様もあります。

赤色にシルバーの糸をいれて、つる模様を織っています。

織物の村ミュージアムに展示していたパネルです。
「Bingu haraik khan mbanh jih」と書いてあります。チャム語で、つる模様の布という意味です。

つる模様のベルトは、様々な儀礼・衣装につかわれるようです。タンさんの織物は研ぎ澄まされた美しさがあり、チャムの伝統文化を担う姿は、勤勉さと表現者としてのすばらしい精神性を感じます。

これは、チャム文化研究センターに訪れたときにカメラに収めました。古いもので、ディティールが細やかで芸術性が高く見入りました。
私のつる模様に関心を持つきっかけとなりました。

チャム族バラモン教の火葬式で、つる模様のベルトがつかわれていました。80歳以上生きた高齢者のためにスカートの裾に縫い付けています。他には、高官にあたる人のスカートの裾につかわれたり、高貴なシーンで見掛けることが多いです。
この模様を織る人も高齢者で「清潔」であり、日々、慎ましく暮らしています。
*私が知っていることは、全てではなく、ごく一部だと思います。

他の織り機で、真紅のベルトを織っているところです。細い布を織るための専用の織り機で、木のペダルを踏みながら、手元で糸を引き詰める音がきこえてきます。

ベルトに糸をくぐらせて、ふちどりとループ状のフリンジを施しています。とても細やかで、ベルベットのように滑らかです。タンさんの作品はとにかく正確で美しさが際立っています。ベルトにくぐらせる糸は、光沢のある多様な色です。
帯状のベルトは、民族衣装に縫い付けてつかいますが、チャム民族には、様々な祭り・儀礼があり、それぞれに、どのような衣装につかわれるのか気になるところです。
フリンジ付のベルトは、巻きスカートの縁(ふち)(裾ではなく、縦の縁どりとして)に縫い付けるとききました。落ち着いた色合いでアクセントになると思います。本当に素敵です。

アトリエには、3台の織り機があります。大判の作品を織っているところで、織り機も経糸を整える道具も、糸車などすべて木材でできています。昔から大切につかわれているものです。

綿の糸で青と水色の縞模様を織っていました。淡いピンクの差し色がかわいらしく、仕上がりをイメージしました。美しい海原をみわたすような清々しい気持ちになりました。
取材協力:saranai Vuさん Vyさん
参考:「Dòng chảy sắc màu」Tiên Phong / Sohaniimさん