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VOL.231 職人 タンさんの織模様 チャム民族の伝統の織物

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

チャム民族の織物の村より、職人タンさんの作品を数点ご紹介します。VOL.230のつづきです。
私の説明はまだ不十分ですがご覧いただければうれしいです。

 

©yukiko aoki

Bingu haraik – Dây leo つる模様  Nghệ nhân Van Thi Than / 職人 ヴァン・ティ・タンさん

巻きスカートの裾に縫い付けられたつるの織模様。ウエストの部分にも模様入りのベルトを縫い付けています。高官など地位の高い人が着用します。80歳以上の故人のためにも使われるそうです。つる模様は儀礼の飾りや高貴なシーンでみられます。

 

©yukiko aoki

つる模様には様々なパターンがありました。それぞれに用途があるそうです。カラフルな糸で織られたつる模様。フリンジは赤・黄・青・黒・白の5色もありました。

 

©yukiko aoki

チャム文化研究センターでみつけた「つる模様」と似ています。

タンさんの作品のなかでも銀色の糸を用いた織模様はしなやかに輝いて、私の心に響くものがありました。色糸の選び方、織模様の組み合わせ、チャム民族の儀礼に使用されていて、織りに込められた職人として尽くす姿と、深い愛情に心を寄せました。

 

©yukiko aoki

巻きスカートの裾はつる模様で、スカートの垂直の縁(ふち)かざりに縫い付けるのは、フリンジ付きと決まっているそうです。この模様はCiim Heng(chim heng)というもので、チャム文化において神聖なシンボルになるそうです。

 

©yukiko aoki

タンさんのアトリエで、これが龍の爪でね。とCiim Heng(chim heng)模様について語っていました。白糸のフリンジがついています。つる模様とともに興味深い織模様です。

 

©yukiko aoki

タンさんは、アトリエで機織りをはじめました。細い糸で白い布を織っています。チャム民族の伝統衣装やベルト状の織模様を縫い付けるための布です。

 

©yukiko aoki

私が庭の写真を撮っていると、アトリエからタンさんがさっと出てきて、籾かきを見せてくださいました。
収穫したばかりの籾を庭で天日干しをしていて、籾かきで均一に乾燥するようにしています。

伝統の織物と同じように、日々の暮らしを大切にしているシーンをみせていただきました。

 

©yukiko aoki

米やもち米を炒るとポップコーンのようになります。それを表しています。参考資料によると、muk rijaという女性のよりましが儀礼で着用するそうです。

私のメモ書きになるのですが、米やもち米を炒るとポップコーンのように花が開いてCơm Lam(コムラン)のようだと思いました。コムランは、お供えの果物などに振り撒いたりしています。ベトナム中部のフエにも似たようなものがあるので、今度、フエとチャム村にいったら確認したいと思います。

 

©yukiko aoki

タンさんにしか織ることのできない模様だとミュージアムの人にききました。

 

©yukiko aoki

左からから、スカートやシャツの縁飾りにつかわれる細いベルト(赤白黒の糸)模様。
ノコギリの歯のようなギザギザ模様(青と赤紫の糸)。
ウミガメの一種タイマイの模様(青糸)。

織り模様に糸の絞り染め(白糸にえんじ色)を織り入れています。これもタンさんにだけ織ることができるのだそうです。指でふれてみると、でこぼこがなく滑らかに織られています。

参考:Web Hoa văn thổ cẩm làng Chakleng (làng Mỹ Nghiệp)
https://disanketnoi.vn/bo-suu-tap/hoa-van-tho-cam-lang-chakleng-lang-my-nghiep/

 

©yukiko aoki

縞模様。日本の縞模様とよく似ていると思いました。一説によると、綿の種は、崑崙人(コンロン人)が西尾市の天竹(愛知県)に伝えたといわれていて、インド人か東南アジアならチャム人の可能性があるそうです。三河木綿の三河縞・伊勢木綿の伊勢縞・遠州木綿の遠州縞などと通じるものがありそうです。海の民といわれるチャム民族なので、どこかでつながっていると思います。

 

©yukiko aoki

この織物は、村のミュージアムで、はじめてタンさんの名前を知ることのできた大判の一枚です。浮き織りの美しさ、正確な織り模様に感動しました。そのタンさんの織物を手にしていると、奥の棚から、米ともち米の花が開いた織物などを出してくれました。

 
取材協力:Vyさん
参考:「Dòng chảy sắc màu」Tiên Phong / Sohaniimさん

 

 
フォトグラファー 青木由希子