ベトナム中部から南部にかけて栄えたチャンパ王国の末裔が多く住むカインホア省南部(旧ニントゥアン省)には、My Nghiep(ミーギップ)織物の村があります。チャンパ時代には、Palei Caklaing(チャックレン村)といいました。
チャム族は母系社会で母から子へとうけつがれる伝承文化があり、バウチュック陶器村(☆)とともに古代より織物をしている村です。
伝説によると創始者は、女神Po Yang Inư Nagarといわれています。ニャチャンにあるポーナガル塔に祀られる女神です。チャム暦のいくつかのお祭りや儀礼にもよくきく名前です。
村の入り口にミュージアムがあります。広い床に機織り機がならび村の女性たちが様々なパターンを織っています。ここは、旅行者としておとずれて織物や小物を購入することもできます。
洗練された複数の織模様と色づかいで、赤と黄色の糸をつかい植物のつる・つた模様が織られていました。
チャム族の伝統衣装には、細長いベルトを肩から掛けたり、腰に巻いたりするので、織り機は細長い布を織るようにつくられています。
大判のストールは綿や絹糸などで織られています。とても細い糸で光沢がありなめらかな肌触りです。
ミュージアムには、チャムのお祭りや儀礼の衣装(男性と女性)と民族楽器の展示がしてあります。
はじめてここを訪れたときに織物の博物館に太鼓や弦楽器が設置されている理由は知りませんでした。信仰心にあつく神や聖者を崇拝するチャム族に多くのお祭りや儀礼があることを知り、民族楽器や舞踊は欠かせないもので、衣装や織物も大切な役割をあらわしているようです。
棉花(めんか)から種をとりのぞいて糸をうむまでの道具と、織を仕上げるまでの工程が写真パネルなどで展示されています。
綿の種といえば、愛知県西尾市にある天竹神社に「棉祖祭」という綿を伝えた新波陀神(にいはたがみ)を祀る祭礼があり、崑崙人(こんろんじん)または、天竺人(てんじくにん)が綿の種を持って漂着していたため、この地に蒔きました。木綿の発祥地といわれています。
崑崙人・天竺人とは、インド系よりマレー系でチャンパの地からきた可能性があると、諸説あるもののよくきくようになりました。
2023年 天竺神社にて 綿に関連する昔の道具や台帳の展示。
チャム族の伝統継承楽団「Kawom khik nam krung(カヴォム・キム・ナム・クルン)」の来日で、天竹神社に参拝をしました。
2023年秋・名古屋にて公演。(☆)
話は、織物の村のミュージアムにもどります。
一枚の織物が完成して、次の作品を織るために縦糸の調整をはじめていました。感動的な場に居合わせました。
機織りをする音が広い床にしずかに響いています。村の中で、先祖代々と伝えられてきた功績に想いを馳せました。
次回は、織物の職人・タンさんとの出会いをご紹介します。
取材協力:Vyさん Sohaniimさん Kawom khik nam krung(カヴォム・キム・ナム・クルン)の皆さん