ヌイチュア国立公園内の吊り橋を渡って、ラグライ民族の居住地でもある山の中へ
VOL.227のつづきです。
ヌイチュア国立公園(ユネスコ生物圏保護区)は、ベトナムと東南アジアにおける乾燥林の生態系を有し、年間を通じて降水量は少なく乾燥した暑い地域です。そのため、希少な動植物の生息する自然環境が育まれたそうです。
海と山の生物多様性の豊かさに抱かれたヌイチュアの魅力に私も気が付きはじめました。
淡く芽吹くヌイチュアのなだらかな山々。穏やかな気持ちになります。日差しが強くて暑いのにやさしい色です。
木の枝のフェンス前を歩く少女。この木は、Chành Rànhというそうです。硬い木で、燃料やフェンスに使われるようです。
大きな通りに大きな木がありました。
葉先の丸い葉と紅色の小さな花がぶら下がるように、いくつも咲いています。
花が咲き終わり、うす緑色のカシューナッツの実がふくらみはじめてきて、やわらかい風にゆれています。
果肉がりんごのように熟したカシューナッツの実。
果肉はそのまま食べて、種子の部分をカシューナッツとして食べています。ラグライ民族の庭には、カシューナッツの木が植えられていて、花が咲くころ、とてもきれいです。
湧水で遊ぶ子どもたち。
ざぶんと高いところから飛びこんで、水しぶきをあげていました。
太陽の眩しさに際立つ赤い実。
蜂の巣でしょうか。人気もなく木陰もないところで暑そうです。私は歩きながら、体温よりもあたたかい乾いた空気を呼吸で感じるほどでした。
それでも山は生きとし生けるものが共生して素晴らしいと思います。
旅のガイドブックには、ヌイチュアの自然で過ごすトレッキングなどもあリます。
ヤギの群れと会いました。ヤギには蹄(ひづめ)があるため、斜面を上手に歩いていました。
食べられる葉をみつけて、高い枝まで首をのばして何度も飛び跳ねています。
つま先立ちをして、ようやく葉に届ました。
ヤギが食べていたのは、タマリンドの若葉でした。ヌイチュア国立公園からほど近いチャム民族の村ではスープの仕上げに使われます。レモンのようなさわやかな味がします。
モリンガの細長い豆さやをみつけました。人は煮込み料理にして種の部分を食べます。ヤギたちはモリンガの若葉を食べていました。モリンガはベトナムでもスーパーフードとして知られていて、サプリメントや若い葉をスープにして食べています。
人もヤギもタマリンドの若葉やモリンガの若葉を選んで食べるので、同じ地域で同じものを食べていて、感動しました。手付かずの自然の中で、素敵なことだと思いました。
公園内のお茶屋さんに立ち寄りました。スイカを友だちと半分ずつ食べました。さっぱりしてあまり甘くないけれど懐かしいスイカの味でした。
吊り橋にもどると、おしゃれなカフェがオープンしていました。山の麓から吹き上げてくる風が心地よかったです。
カフェにはバウチュック陶器村でつくられる野焼きの花瓶が飾られています。
黒く燻してみえるのは、焼きあがりにカシューナッツの皮から抽出した成分を吹きつけるためです。(☆)
素朴さと趣のある深い仕上がりです。
ヌイチュアに自生する落ちそうで落ちない実をみつけました。木の名前は、Mũ chôm / Mủ trômといいます。樹液に薬効があり、ヌイチュアを含む旧ニントゥアン省とビントゥアン省の特産品です。
取材協力:Vyさん