バウチュック陶器村の工房にて(VOL.163, VOL.164)のつづきです。
古代チャンパ王国時代からつづく東南アジア最古の陶器村。焼成をするときは、窯焼きではなく、木の枝や藁(ワラ)で覆うだけの野焼きをします。
乾燥した木の枝をくべながら陶器を積み上げます。ココナッツの殻も隙間に入れて燃料にしていました。
この日は、大きな花瓶や植木鉢、装飾用の置物などを焼いていました。
バウチュックの陶器は、チャム民族の暮らしの様々なシーンで使われてきました。台所で使う鍋や器、水がめや米や塩などの食材を保存するための壺(つぼ)。チャンパの神々の像、装飾レリーフなどから、チャム民族の信仰や口承伝承の物語、植物など自然をモチーフにしたものがあると思います。
陶器を積み重ねた上から藁(ワラ)でしっかりと覆います。
火入れをすると藁(ワラ)は勢いよく燃えて、陶器は炎に包まれました。工房は熱気でとても熱く、煙は目にしみるほどでした。
数時間の焼成後、自然に冷まします。すぐに見ることはできませんでしたが、仕上がりが楽しみです。
これは、工房に展示してある花瓶です。素焼きした赤い土色と、煙に燻されたような黒色の陶器があります。温かみのある美しいシルエットに植物のレリーフやロープなどの装飾が施されており、光沢のある深い陰影にひきこまれます。バウチュックにしか表現することのできない大地からうまれた芸術性に感動します。
はじめてバウチュックの黒い陶器をみたときに、どのように色づけをするのか不思議に思いましたが、今回の訪問で謎が解けました。
それは、Vỏ hạt điều(ボー・ハッデュー)カシューナッツの茶色の皮を使います。皮を水に浸して抽出した液体を布などに含ませて、焼きあがった熱い陶器に染みこませると、黒い色になるのだそうです。
数年前に他の工房でみかけた風景を思い出しました。工房の人たちが急いでカシューナッツの皮をむいていました。まさか、このときは陶器づくりに使われるとは思いませんでした。
村の歩道にて。小さなものは道端でも野焼きをしています。天候をみながら、からっと晴れた日には、村のいたるところで伝統の陶器づくりをしています。
取材・撮影協力:Gốm Bàu Trúc-Mỹ Tiên,Other(バウチュック陶器村)