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VOL.178 『Palei Cam』チャム民族の村にて

release : 2021-5-31 category : ベトナム〜おいしい散歩〜

梅雨入りしたかのような東京の空模様ですが、乾季を迎えているチャム村に住む友人からは、毎日とても暑い!とききます。ただ今、世田谷区のカフェにてベトナムの先住民チャム民族の写真展をしています。
 

『Palei Cam』
チャム民族の村にて
Yukiko aoki Photo Exhibition

会期は、〜6/30まで
場所は、カフェ&ダイニング素々(もともと)
東京都世田谷区宮坂3-13-13 B1
・日曜定休
・6月中旬に写真展示の一部入れ替えをします
 

『Palei Cam』(パレイ・チャム)は、チャム語のタイトルです。Paleiは村で、CamはChăm(チャム)という意味です。

今回は、Palei Katuh(パレイ・カトゥー) / Làng Chăm Tuấn Tú ベトナム語でトゥアン・トゥ村の写真から、20枚ほどを展示しています。

朝ごはんの屋台にお母さんや子どもたちが集い、村の道をゆくと牛飼いの少年に放牧の羊や山羊にも出会います。人と生きものの距離が近しくて、摘み菜の食文化があり、海にも近いところに暮らしています。村のなかですべてがそろうほどの、ゆるやかなリズムがたえまなく流れているように思います。

はじめてPalei Katuhを訪ねたのは、8年前の5月でした。2013年から2019年にかけて撮影をしました。
 

©yukiko aoki

サボテンを切り開いた道。

チャム村があるベトナム中南部沿岸地域のニントゥアン省からビントゥアン省にかけて、乾燥地帯がつづきます。サボテンは黄色い花を咲かせ、赤い実がなります。チャム村で印象に残る風景です。
 

©yukiko aoki

ピーナッツ畑でゆうゆうと歩くGà Nòiという鶏と、樹液が薬になるMủ Trômという木。

チャム村の風景には、ゆるやかさがあります。人の手が自然に優しく働いて田んぼも畑も自然の一部のように地表をおおっています。Palei Katuh(トゥアン・トゥ村)は、オーガニック村として知られ、きれいな野菜を栽培しています。調べてみたところ、水脈にめぐまれた地域になるそうです。
 

©yukiko aoki

チャム村名物のBánh Canh(バンカン)をつくっています。タピオカ芋入りの米麺をチャム村では海の魚のスープで食べます。

バンカンといえば、ベトナム中部地方フエも郷土料理として有名です。ラグーン地域の雷魚や蟹、豚足のバンカンがあります。昔は、フエもチャンパ王国でしたが、フエのラグーンが、チャンパ時代から受け継いできているものは何があるだろう。ベトナムの食を通じて、思いを馳せることがあります。

*このページの最後に、チャンパ王国、チャム民族について書いています。

 

©yukiko aoki

魚のスープは、Mắm cá(マム・カー)という魚を発酵させた調味料に、水と砂糖と塩を加えてつくります。甘みのあるやさしい味です。Bánh Canh(バンカン)のCanhはスープという意味で、スプーンですくって食べる麺料理です。のどごしのよいタピオカ芋入りの米麺の上には、さつま揚げがのせてあり、レモンをしぼって食べるチャム村のバンカンは、暑い夏の日にぴったりです。
 

©yukiko aoki

Cham bani(チャム・バニ)族のラマダンにて。夕方になると各家庭から食事がモスクに運ばれます。これはテーブルに食事がのせてあり、竹かごのカバーがかぶせられています。この村では、頭の上にのせて民族衣装を身にまとった女性たちがモスクまで歩きます。とてもユニークで美しい光景です。
 

©yukiko aoki

市場にて。ラマダンに使うかごなどが売られていました。カラフルな模様はいろいろあるようなので、次回は調べてみたいと思います。底がころんとした丸いかごは、温かみがあり繊細で丈夫に編まれています。曲線の美しいフォルムに、私はバウチュック陶器村の素朴な鍋やつぼを思い出しました。
 

©yukiko aoki

日が沈みかけているころに村から近い浜辺にいきました。背中にコブのある牛の群れが歩いていました。山間からこぼれる太陽のひかりが美しかったです。
 

©yukiko aoki

チャム村でよく見かけるBồn Bồn(ボン・ボン)という花。種になると綿毛がついているので風にのって、田んぼや川や海辺をふわりととんでいきます。
 
 

『Palei Cam』写真展より
6月中旬の15日からは、チャム民族の家庭料理に民族衣装を身にまとったおじいさんとおばあさんの写真なども展示する予定です。最寄の際には、ぜひ、いらしてください。
 
 
【チャンパ王国、チャム民族について】
ベトナムには、かつてチャンパ王国がありました。2世紀(192年)から19世紀(1834年)まで、現ベトナムの中南部に広がる国土で栄えていました(北限はクアンビン省のドンホイで、南はドンナイ省のあたりまでときいています)。すぐれた航海技術を持つ海洋民族であり、琉球王国、朱印船貿易、海のシルクロードを通じて、古来より日本と関わりがありました。

チャンパ王国は、Chăm(チャム)・Ra Glai(ラグライ)・Churu(チュル)・Êđê(エデ)・Jarai(ジャライ)・K’ho(クホー)などの複数の民族からなる国でした。11世紀から大越国Đại việt(現ベトナム)から攻められ国は滅びましたが、現在、ベトナム中南部沿岸地域のニントゥアン省、ビントゥアン省を中心に、チャム民族の多くが暮らしています。チャム語を話し、民族衣装をまとい(おじいさん、おばあさんたちは毎日着ています)、母系社会を受け継いでいます。主な宗教は、バラモン教、バニ教、イスラム教などです。

ニントゥアン省には、チャム民族23の村があります。口承伝承のすばらしい伝統文化(*)があり、生態系を守りながらサスティナブルな暮らしをしています。村から村へはしごする旅はそれぞれに魅力がありとても楽しいです。

(*)伝統文化のひとつに、バウチュック陶器村があります。他には、織物の村もあります。チャム民族の音楽や踊りもすばらしいです。

 
 
フォトグラファー 青木由希子