single.php

VOL.192 チャム民族のつみ草をたずねて-6

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

『チャム民族のミチヤナギの米粉スープ』 〜 la bai njam phik 〜

チャム民族の村 Palei Baoh Dana(ボホダナー村)の
風の通り抜ける畦道にて。

つみ草の知恵を教えてくれるỐm(オゥン)お父さんが、庭の野草について村人と立ち話をしています。

 

©yukiko aoki

右側のỐm(オゥン)お父さんはミチヤナギを手に持ち、自転車に乗っている村人のおじさんは根っこが薬になる木を持って話をしています。何気ない風景のなかに、チャム民族の伝統の知恵は、日々の自然観察や口承伝承によって育まれてきました。

 

©yukiko aoki

地べたをはうように庭に広がるミチヤナギ。

日本名は、ミチヤナギ
チャム名は、 njem phik(ヤン・フィー)
ベトナム名は、Rau đắng(ラウ・ダン)といいます。Rauは野菜、đắngは苦いという意味です。

 

©yukiko aoki

根っこが薬になる木は、
チャム名で、Puid cham saikと言います。ベトナム名は不明でした。
おたふく風邪に効きます。
小さな白い花が咲いて、根っこの部分を石などですって、しぼった汁を患部にぬります。

*この木は、VOL.190(中段)でご紹介しました。

                     ***

オゥンお父さんがお昼に『チャム民族のミチヤナギの米粉スープ』をつくってくれました。

カーコムという海の小魚とミチヤナギを煮て米粉の汁で仕上げるスープです。とろみがありほっとする味で、ミチヤナギの苦みが胃をスッキリさせてくれます。

 

©yukiko aoki

材料:
ミチヤナギ
Cá cơm(カー・コム)というカタクチイワシ科の海水魚
赤エシャロットをヌックマムで下味をつけたもの
生米を浸水後すり鉢でたたいた水溶き米粉
Ngò ôm(ゴー・オム)という香りのよい葉 

                          
 

©yukiko aoki

鍋に水を入れて、カーコムとたっぷりのミチヤナギを煮ます。

 

©yukiko aoki

Bột gạo nướcという、生米からつくる水溶き米粉を入れて、
赤エシャロットとヌックマムを入れます。

*Bột gạo nướcのつくり方は、VOL.189に書きました。

 

©yukiko aoki

ゆっくりと鍋をかきまわしています。白い湯気が立ちのぼるとチャム民族の伝統あるレシピに思いをめぐらせて、『チャム民族のミチヤナギの米粉スープ』は、どれくらいの年月を経てきているのでしょう。庭のミチヤナギ、村のお米、カーコムは塩漬けにしてヌックマム(魚醤)にするベトナムに欠かせない身近な海の魚です。赤エシャロットは香味野菜でニントゥアン省の名産です。シンプルで生命感にあふれるレシピは自然の恩恵をうけて時間をかけて研ぎ澄まされてきたように思いました。

 

©yukiko aoki

ふつふつと煮たって米粉のとろみが出てきたら、火からおろします。
もし、あれば、Ngò ômという香りのいい葉を刻んで入れます。

 

©yukiko aoki

食べ方は、白いごはんにミチヤナギの米粉スープをかけます。muối ớtという刻んだ赤唐辛子塩をお漬物のようにのせて、一口ずつ箸で食べます。米粉スープは、お粥やとろろごはんのような感じで、muối ớtをのせて食べるとうま味が引き立ち食が進みます。日本人の私にほっこりさせてくれる懐かしい素朴な味が広がります。

 
取材協力:Sohaniim(ソーさん)

 
 
フォトグラファー 青木由希子