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VOL.156 「トーチカ」

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

 畦道のおばあさん(VOL.155)のところから南の方へ、フバイ国際空港(フエの空港)の手前に「トーチカ」がありました。

 ベトナム戦争のときにつくられた見張り台です。トーチカはロシア語で、ベトナムでは、lô cốt (ロー・コッ)といいます。建物の小さな窓から監視し、敵軍の侵攻をはやく見つけて、銃で威嚇(いかく)したり撃ったりしました。

 フエの友だちから、Yukikoの昔の写真には、「トーチカ」がたくさん写っていたと思うよ。フエには、たくさんあったから。忘れてしまったの?といわれて、はっとしました。

 「トーチカ」は、フエの街なかにもあります。阮朝王宮の城壁にも、旧市街に入る門の上にもありました。ハイヴァン峠(フエとダナンの間にある峠)にもあることも思い出しました。ベトナム戦争時、フエからダナン周辺は、南ベトナムの最前線であり激戦区でした。

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 トーチカのある田園風景を抜けて橋を渡るとき、まっすぐな川がありました。

 雨季のため川の水は濁ってみえますが、青い空と白い雲が映り込んでいて、ホテイアオイなどの水草が浮かんでいました。川魚を釣るしかけや、網を張って小さな養殖もしているようでした。

 9月は夏休みが終わり学校がはじまります。橋の上で麦わら帽子の女の子と目が合いました。真新しい制服を着ていたので、たぶん、小学一年生だと思うのですが、なだらかな傾斜のある橋で、自転車のペダルを力いっぱいにこいでいました。

 川岸から、銅鑼(ドラ)と太鼓の音が、鳴り響いてきました。ゴーンゴーン、ドドン。
これから何がはじまるのでしょう。わたしも村人が集まる祠(ほこら)へと向かいました。

 
 
 
フォトグラファー 青木由希子