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VOL.213 フエの水辺にて

release : category : ベトナム〜おいしい散歩〜

一年前の6月は、盛夏を迎えたベトナム中部フエにいました。フエは南シナ海に接する沿岸地域にラグーンがつながる広い湿地帯があり、5月〜6月にかけて、水辺に蓮花や睡蓮が咲く季節です。

 

©yukiko aoki

静かな村に、蓮の花が咲き、アヒルが悠々と泳ぎまわり水音を立てながらエサをみつける姿にほっと和みます。蓮花は次々と咲いて結実しています。木陰をみつけて水辺で休んでいると涼しい風が通るので、心地よい気分になります。

水田は、こがねいろの収穫のときを迎えました。フエのラグーン地域では、乾季のはじまる旧正月に田植え(籾の直播や苗を植えます)をします。雨季になると大きな洪水が起こるため一毛作にしますが、内陸の方は三毛作のところもあるそうです。

<フエのラグーン>
ベトナムで最も広いタムジャン-カウハイ(Tam Giang-Cau Hai)ラグーン地域は、昔から、エビの養殖や稲作がおこなわれています。エビをつかう郷土料理や発酵食・調味料などフエ特産品があり、今なら旬のCá kinhというはらわたに苦味のある若い魚のスープや米粉のバインセオにしてローカルフードを楽しむことができます。タムジャン-カウハイの藻場は豊かで水辺の生きものたちのゆりかごといわれています。

2020年の6月5日には、タムジャン-カウハイラグーン湿地帯の生物多様性を保護するニュースが流れました。
Wetland reserve to protect biodiversity in central Vietnam
(June 5, 2020 VnExpress・英文)動画: 1:50からCá kinhのバインセオが紹介されています。ターメリックを入れない白いバインセオです。

 

©yukiko aoki

蓮沼には、Cấm đánh bắt cá(魚釣りの禁止)の看板がありました。この村で初めてみました。田んぼにいくと小魚やサワガニやタニシをおかずに持ち帰るのですが、魚の養殖をはじめているようでした。

 

©yukiko aoki

丸太の渡り橋です。ラグーンには渡しの文化があり、手づくりの橋や小舟で移動します。水辺の生きものが行き来できる昔ながらのやさしい暮らしです。

 

©yukiko aoki

小舟で対岸に渡り、田んぼや畦に設けた畑の世話をします。

ここは収穫を終えて、再び、田んぼを整えていました。台風シーズン到来までに早稲の米づくりをします。

 

©yukiko aoki

竹の花だと思うのですが、水辺の小さな船着場で竹林に花が咲いているのをみつけました。竹の種類によるそうですが、60年に一度、100年に一度という周期で花を咲かせるときいています。

 

©yukiko aoki

つややかな緑の葉の茂みにノニが実をつけていました。小さな白い花も咲いていました。

 

©yukiko aoki

この村には、私が水牛のおじいさんと呼んでいるおじいさんとおばあさんの家があります。久しぶりの再会にとても喜んでくれました。以前は、土間の家に住んでいましたが、新しい家に建てかえられていました。

この写真は、おじいさんから記念写真と一緒に撮ってね!といわれて、カメラに収めました。久しぶりの笑顔に出会えて私も嬉しかったです。

 

©yukiko aoki

おじいさんの家にある仏壇です。お寺にいるようなとても立派なしつらえです。フエでは仏壇と墓にお金を惜しまずにつかいます。

 

©yukiko aoki

おじいさんとおばあさんの新しい台所です。床は土間からタイルになりましたが、古い木製の食器棚はそのままつかっています。新しいガスコンロの上には、かまどの神様が祀られています。以前は、薪をくべて煙を立ちのぼらせていたかまどの神様の祭壇を思い出すと無くなってしまったことに寂しさを覚えますが、おじいさんもおばあさんも高齢なので、時の流れがあると思います。

 

©yukiko aoki

おじいさんの部屋です。左側のドアを開けると中庭につながって開放的なつくりになっています。おじいさんの寝具や蚊帳は昔のままです。

 

©yukiko aoki

写真が好きなおじいさんの部屋には、私が撮影したモノクロの写真が飾られています。生業にしていた水牛とおじいさんの写真です。おじいさんは水牛を育てて農家に貸し出す仕事をしていました。

初めてお会いしたときは、水牛を育てていて、街が少しずつ発展し車社会になるにつれ、牛を育てるようになり、今は、引退しています。おじいさんは、水牛や牛を育てるのが上手で、思い出話になりますが、おじいさんが台所から土間つづきの牛小屋に入ると牛たちは構ってもらいたくて擦り寄ってきていました。今は鶏のヒナたちが甘い声で鳴いています。

 

©yukiko aoki

おばあさんは、中庭で余ったおこわを天日に干していました。昔は保存食にしていましたが、今は鶏のエサにしているそうです。庭の薬草は乾燥させてお茶にしています。

 
 
おじいさんとおばあさんの暮らしやフエのラグーンについて、今までのフォトエッセイに収めています。

・犬かき(雨季の頃のラグーン):https://p-pho.com/column/vietnamgourmet/19362
・フエのおじいさんの家で(土間の家):https://p-pho.com/column/vietnamgourmet/19318
・フエのラグーン、エビの養殖場にて:https://p-pho.com/column/vietnamgourmet/26301

 
フォトグラファー 青木由希子